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「高分子のリングとひも」“マクロロタキサン”の合成に成功 ~時間が経ってもにじみ出さない高分子添加剤として期待~

2023年7月20日更新

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北海道大学大学院工学研究院
お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系
東北大学多元物質科学研究所
科学技術振興機構(JST)

 北海道大学大学院工学研究院の佐藤敏文教授、磯野拓也准教授、お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系の出口哲生教授、東北大学多元物質科学研究所の陣内浩司教授、丸林弘典講師、防衛大学校応用物理学科の萩田克美講師らの研究グループは、環状構造をもった高分子(環状高分子)とひものような高分子(線状高分子)の混合物に対して架橋反応*1を行うことで、環状高分子のリングの中に線状高分子が入り込んだネットワークポリマー*2の合成に成功しました。
 リング分子に軸分子が貫通した「ロタキサン」は、軸分子両端のかさ高い構造の存在によって2つの分子が物理的につながった構造を有する超分子*3であり、2016年のノーベル化学賞のトピックとしても注目されています。これまで知られているロタキサンはリング分子が比較的小さい小分子化合物に限られており、リング分子と軸分子の両方が高分子からできた巨大なロタキサンは全く注目されてきませんでした。しかし、巨大なロタキサンは分子量や構造を調節することで未知の物性や機能が期待できるため、その合成は意義深い挑戦と言えます。
 研究グループは、環状高分子と線状高分子を混合した状態で線状高分子末端の架橋反応を行うことでロタキサンの形で環状高分子を取り込んだネットワークポリマーの合成に成功しました。研究グループが「マクロロタキサン」と名付けたこの巨大なロタキサンはリング分子と軸分子の両方が高分子から形成されているため、環状高分子のリングの数や大きさを自在にアレンジすることができます。
 さらにロタキサンの形でネットワークポリマーに取り込まれた環状高分子は材料からにじみ出さないにもかかわらず、液体のように振る舞ってエネルギー分散性を付与できることから、建築物に使われる免振ゴムのような制振材料やタイヤの素材等へ応用可能であることを実証しました。今後、マクロロタキサンの特長を活かした新たな高分子材料の開発が期待されます。
 なお、本研究成果は、2023年7月17日(月)公開のAngewandte Chemie International Edition誌に掲載されました。

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